稲荷山誠造 明日は晴れか  香住泰

面白いです、本当に楽しませて頂けました、感謝します。

この稲荷山誠造 明日は晴れか 全国の書店員さんが世に出したい、読書好きなファンに読んで貰いたいと投票する「サナギ賞」受賞作品だそうです。

第一回優秀作、流石に本のプロの方々が選ぶだけありますね、香住さん最高です。

 

一代で金融会社を築き上げた昭和のゴリゴリ経営者稲荷山誠造が主人公。

ある日、五反田翔という若い男が渡したいものがあるとやってくる。

その青年は20数年前に結婚に反対し、疎遠になった実の娘桃代の息子だった。

 

誠造は翔から桃代が突然いなくなり、家が荒らされていたこと、何かトラブルがあれば誠造を頼り手紙を渡すように言われてきたことを聞く。

己の知らない所で何か不穏なことが起きていると思った誠造は翔と動きだす。

 

人生に気合の入ったこの誠造じいさんと現代的で軟弱、無気力で人間関係もスカスカの孫の翔との掛け合いがメチャ笑えます😁

 

困難やアクシデントを乗り越える度に成長していく物語も面白いですが、己の老いと向き合い、迫りくる死を意識し、人生の流れを信頼し、そこへ身を預ける老獪なパワフルじいさんが変わっていく様がやっぱりハイライトですね。

 

娘の桃代の行方を捜す途中、様々なトラブルが彼らを襲うのですが、数々の修羅場を潜り抜けてきた誠造の丹力、度胸、土壇場での機転で乗り越えていくのが痛快。

 

やがて翔ともテンポが合いだし互いに対する思いの変化がとても心地いい。

老人版のジェイソンステイサム?誠造の追い詰められた時の強さ、知恵や口八丁、手八丁を傍で見ていくうちに翔のDNAに火が灯りだす。

 

この物語の素晴らしさはスケールの大きさもありますし、何といっても普遍的なことをとても良いタイミングで示唆してもらえることだと思いました。

刹那的な人との関わりでなく、人からの信頼を得る生き方をその都度選んできた男の真価。

昔に世話になったヤクザの女親分への義理、人情を欠かさずに付き合ってきたこと、誠造の片腕の人物、亡くなった妻の代からの心優しい家政婦さん、CIA並みの仕事をする探偵をとても大事にしている。

誠造の所作や力強い言葉の数々に描写されています。

 

もう一つ、この探偵の方の毎回の登場の仕方も楽しみの一つでした😊

 

この続編を読みたいです。

誠造の血を受け継ぐ桃代と翔のこれからの成長物語を。