2030年の世界地図帳 落合陽一


 

日本の現状と方向性

4年前の本、SDGSについてよく目にするが、できた背景、世界がどのようにアプローチしているのかなどデータ、地政学を元に分かりやすく解説されている。

人口が減り続け環境や文化、技術の伝統を維持し,継承していくことが難しくなってきた日本、この国の立ち位置、各国との連携など序文から惹き込まれる。

2030年、日本は国民の3分の1近くを65歳以上の高齢者が占める国で、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり全人口の占める割合は約2割に達する。

社会保障制度を支える生産人口の(15歳~64歳)の割合は6割以下まで減少し、約1,8人の現役世代が一人の高齢者を支える構造だ。

如実に経済力が落ちてくる中、それでも日本が優位性を保てる分野があり、品質の割に安く買い叩かれる日本の技術力、伝統とテクノロジーを融合させたデジタル発酵、資源、食料、都市、労働、健康といった切り口から、撤退戦とも言えるこの国の踏ん張り方、方向性を示唆。

最も着目したのは日本と科学技術、工業を強みとする点で特にスイスの在り方だ。

鍵となるのは特許性の高い技術による高付加価値の量産、もしくは量産できない製品に文化的価値、機能的付加を付与することで、単価を上げ高い利益率を実現する産業構造。

スイスの特許品、機械式腕時計は16世紀以降の長い歴史、数百年に渡って蓄積された価値評価で簡単に揺るぎはしない。

スイス時計産業の95%は輸出、だが国内での需要も多く2000年以上の伝統をブランディングしてきたヨーロピアンデジタル。

手工業による製造は量産に向かない為、希少価値も維持される資産として見られ、この伝統はハードとソフトの組み合わせにおいて優秀な日本にはモデルになるのではないかと著者は述べる。

 

4層の産業構造

これは面白かった、倫理観、情報、工業、資源の4個の図。

法と倫理(ヨーロッパ)、情報(アメリカ、中国)、工業(中国)資源(中東、アメリカ)、日本はこの勢力関係の中、調和或いは、合従連衡しヨーロッパの理念に同調しつつもアメリカと中国の間に立つことで独自の存在感をしめしていく。

日本の活路はヨーロッパの環境意識の高さ、中国、インドの経済成長、アメリカの大量消費など各国の特徴を第三者の視点で見ながら攻める、SDGSといった世界共通ルールをうまく利用しようとすることだと。

SDGSって何?

SDGSとは持続可能な世界の実現の為に作られた世界共通の目標。

その母体となるのはMDGS,8つの目標からなり21のターゲットで途上国が中心。

(これは世界中、全ての子供が男女の区別なく初等教育の全課程を修了すること)

SDGSは17の目標の下に、169のターゲットが併記されていて、各タスクの数値は具体的で抽象論で終わらせないと、対象は先進国と途上国の両方で、MDGSとの決定的な違いは国連やNGOだけでなく、企業が策定や運用に大きく関わっている。

日本にいる私たちが直面している問題に結びついた目標と、諸外国の遠い世界の出来事としか思えない目標が混在している。

他国にとって貧困化にあり、その日を生きるのに精一杯の人達は、環境保全ジェンダーの目標は絵空事にしか思えないし、日本から見たら飢餓など遠い国の話で、まだ食べられる食材を廃棄するフードロスが問題になっているのが現実だ。

世界を覆い尽くすグローバリズム、先進国と途上国を同じ観点から考えようとした時に発生する齟齬に矛盾の表れ。

SDGSは世界を守る最後の砦かもしれない。

最後に

一見、物自体の価値と持続可能性の間には埋めようのない距離があるなと。

両者の関係性を考えることがこのSDGSへの参加、理解へのスタートとなるのではないか。

価値があると思われてるものの価値をどうやって維持していくのか。

また価値がないと思われているものに、どうやって価値あるものに転換していくのかと注視していくこと。

この2点、サスティナブルとはなんだ?循環型経済や社会ってなんだとそれぞれが考えることが大切なんだと思った。

特にヨーロッパの伝統や文化を背景にした考え方には感動。

スペックに表記されない価値と想像、職人技のものつくり、ブランド価値を高める技術はSDGSの目標である働き甲斐、成長、労働負荷や環境負荷の低減を同時に行えるものではないか。

勤勉で慎ましく優秀な我々日本人はまだまだやれるよ。

 

著者の落合陽一さん、初読みでしたが分かりやすく丁寧でまた面白かった、他の作品も読んで行きたい、お勧めなどあれば教えてね。

じゃまたな。